建築分野 卒業・進級作品DESIGN FIELD
継なぐ
設計趣旨
建築の巨匠 フランク・ロイド・ライトの目にもとまった大谷石。淡く、優しい色、風合いの大谷石を使い、消費需要を高める施設計画を、「継なぐ」をキーワードに提案する。 ターゲットは、旅行客および仕事の兼ね合いで訪れる中期滞在者を目的とする。 新型コロナの流行により、生活、娯楽、働き方などの多くが変化し、消費需要が低下するなか、アフターコロナ、with コロナとの付き合い方が必要となってくる。そこで、宿泊施設+ビジネスを融合させた。 適度な距離間で空間を繋ぎ利用していただける宿泊施設は、ソーシャルディスタンスを意識した計画である。石切場内の就寝スペースは、スラブのレベルを変え、他者と密接にならないよう、状況に応じて可動間仕切りを配置した。石切場内には、木の温もりを感じるよう、栃木県の杉や檜を活用したデザインだ。 また、宿泊施設から温泉施設まで継げることにより利用者が石切場内に吸い込まれるような感覚を体感できるようにし、大谷石を肌で感じることのできる施設とした。
鳥瞰パース
全体的にとちぎ材と大谷石を使っており、上部にある石切場や森などは既存のままなため、施設に統一感が生まれ、自然と調和するような建物となっている。中央に広場を設けることでシーズンごとにイベントも開催でき、宿泊客だけでなく、日帰りの観光客も訪れやすい。森に囲まれているものの、開けた大空間があるため、施設内でも常に日が差し込み建物と観光客を明るく照らす。
宿泊施設(石切場内)
とちぎ材を使った軸組で就寝スペースが作られており、肌でとちぎ材と大谷石を感じることができる。可動式ユニットのため、日によってプライベート空間の個数を増減でき、レベルの違う就寝スペースを設けることでソーシャルディスタンスを保つことが可能。そのため、プライベート空間の個数を増やすことで宿泊人数を増やすことを可能とし、プライベート空間の個数を少なくすることで空間に余裕が生まれ自然の建築を堪能しながらリラックスすることができる。また、とちぎ材には断熱性・遮音性・調湿効果、大谷石にはゼオライト・消臭性・耐火性などの効果があり、夏は大谷石で涼しく冬はとちぎ材で暖かく、四季にとらわれることなく快適に過ごせる。
インフォメーションセンター/レストラン
1階はインフォメーションセンター、2階はレストランとなっている。 インフォメーションセンターは、係員が常にいるため、施設内で何か困ったことがあったら聞くことができ、宿泊施設のチェックインもここで行う。また、中央の外に面した所に配置することで、施設内への動線距離を縮めた。レストランは、天井を見上げると空と木材が見え、森の中で食事しているような感覚になり、店内のBGMを小鳥のさえずりなどが入っているものを流すことで、五感を働かせ癒しの効果を得る。両者ともに中央にとちぎ材で組んだ柱があり、外壁がガラス張りとなっているため、施設内でとちぎ材と大谷石を一緒に観ることで、内側から石切り場を眺めたり自然と施設全体が一体化しているのを楽しみながらリラックスしていただく。
木橋
石切場内から続く木橋は、とちぎ材のスギとヒノキを使って継ないでいる。とちぎ材は、まっすぐで幹が太い優良材、あて材やしみ・腐れなどの欠点が少ないなどの特徴があり、トラス構造と刎橋という架橋形式を使い強度を高めることで、大スパン×とちぎ材×建築美を可能とした。木橋は、インフォメーションセンター・レストラン・宿泊施設・露天風呂などの全ての施設を行き来する連絡橋でもあり、大自然と施設を継なぐ架け橋でもある。木橋を造ることで、施設を使う人と広場や車の出入りする場を分けることができ、安全かつ施設の行き来をスムーズにした。また、刎橋(下の角材が上の角材を支え、桟積みのように幾重にも交互に積み重ねる)という形式を使い、下から上に向かって広がる逆三角形のような形にすることで、雨が降った場合でも、風が通るように間隔を空けているため木材が乾燥するのが早く、腐敗スピードが遅い。